YAMATO criticism

宇宙戦艦ヤマトについて、または宇宙戦艦ヤマトを通して考える。

「ヤマト完結編」で知った性への憧れと怖れ

 「宇宙戦艦ヤマト完結編」の公開は小学校6年の春休みだった。 
当時から筋金入りのヤマトヲタで、アニメ誌で情報をチェックしまくっていたから、当然公開前から古代君と雪が結ばれるという情報(高橋信也氏のイメージボードも、公開前にアニメ誌に載っていた)も知っていた。 

 余談だが「宇宙戦艦ヤマト2199」の出渕監督が完結編当時、スタジオぬえのメンバーから”ポルノ映画監督就任おめでとう”とヤジられたという話をヤマトークでしていた。 
 じゃ、スタジオぬえが自信をもって送り出した主人公が複数の女性とセックスする「超時空世紀オーガス」(しかも日曜午後2時からTV放映。私は中学1年でリアルタイムで見た)は、ポルノではなく性教育番組でしょうかと、ぬえの方々には謹んでお尋ねしたい。


 大好きな古代君と雪がついに…というのは当時の私にとって天地がひっくり返るほどの衝撃だったのだが、でもセックスとはどういう行為なのか実際のところ知らなかった。そういう話題についてこられる友人もいなかった。(女の子が5人しかいない過疎地の小学校で、転校生の私はほとんど孤立していた。) 
それで、自分でジュニア向けの性教育本を買ってきて"独学"した。古代君と雪の愛への憧れがあったから、セックスに対して負のイメージは全く持たなかった。 

 しかし「愛する人と初めてのセックスをする」ことに憧れる反面、それができなくなった時ーレイプされたりしたらーもう死ぬしかないんじゃないかとただただ恐ろしくなった。 

 その頃読んだマンガ「彩りのころ」(津雲むつみ)とか、小説「二つの祖国」(山崎豊子)「人間失格」(太宰治)にもレイプシーンが出てくるが、心底怖かった。 
 極め付けに怖いと思ったのは、マンガ「凄ノ王」(永井豪)のレイプシーンだ。今でも目を背けたくなるほど残酷だ。永井豪氏といえば、エッチまんがの大家(?)だが、性暴力の残酷さを真正面から描ける人でもあるのだ。 
日出処の天子」(山岸涼子)に登場する蘇我蝦夷の妹・刀自古の運命も悲惨である。 

 でもその一方で、たかがセックスで汚されたとか何とか人間の価値が変わるなんてそんなの変だ。おかしいじゃないか。セックスで女の何が変わるというんだという思いがだんだん頭をもたげてきた。 

 大人になってから読んだ「大奥」(よしながふみ)には、様々な形で望まないセックスを強いられた女たちが登場する。 
 世継ぎを産むためであったり、仕組まれた制裁であったり、父親からの性的虐待であったり。でも女たちは犯されてそれで終わりではなく、それぞれの人生をきちんと誇り高く生きている。勇気をくれる作品だと思う。 

 自分の娘にセックスについて問われたら、「自分の身体は自分のもの。自分の身体についてちゃんと勉強して、ちゃんとあなたの意思と身体を大切にしてくれる相手と、自分でしたいと思った時に。それが守れれば、いやらしいものでも悪いもんでもないよ。」と教えたいと思う。 

 昔のおニャン子クラブの歌に「オバンになっちゃうその前に」なんて歌詞があったが、何歳でしようと自分の勝手。 
 若い女の子のセックスで商売したいおじさんの妄言なんざ、鼻で笑ってやれと教えたい。 

 自分の身体なんだから、売春しようが何しようが勝手じゃないかと言われたらー数万円のお金と引き換えにするには割に合わない行為だと教えたい。 
 妊娠や性感染症・また写真撮られて強迫とか覚醒剤なんかの強制など、密室での売春は女性にとってリスクが高い。 
 逆に、その割に合わない行為を強いられる女性たちがいることも教えたい。 

 大切なことは、セックスで人間は変わらないということ。 
 マンガや小説みたいに、セックスしたからメデタシメデタシではない。身体が結ばれるより、心が結ばれる方がはるかに難しい。 
 望まないセックスを強いられた時もーそれであなたが変えられるわけじゃない。これが一番大事。

【初出:2017.2.26 MIXI日記】