YAMATO criticism

宇宙戦艦ヤマトについて、または宇宙戦艦ヤマトを通して考える。

ノベライズ大好き♪【古代&雪萌え編】

宇宙戦艦ヤマト完結編・前編(岬兄悟 アニメージュ文庫)

宇宙戦艦ヤマト完結編・前編(岬兄悟 アニメージュ文庫)

 古代はユキの髪の匂いを思い出した。そして、抱きしめたときの細いが、意外にしっかりした筋肉の感じられる体の感触。

 昔引越しした時に紛失してしまったため記憶だけで書いてますが、岬兄悟氏による完結編ノベライズの一文はこんな感じだったかと思います。

 公開2年前から、逐一アニメージュで事前情報をチェックしていたにもかかわらず、私は完結編を映画館で観ていません。公開時やっと小6だった私は、親の許しと引率がなければ、映画館のある街に行くことはできませんでした。

  リアルタイム当時映画館でヤマトを見たのは『永遠に』1回のみ。ビデオもない時代ですから、私にとってのヤマトはロマンアルバムなどのムック本と小説でした。

 にしても、あの冒頭の一文は萌えました。あれだけでゴハン3杯いけます。

 やっぱりですね。ユキ様はあの松本美女スタイルだからこそ萌えるんですよ。 ワタクシ世の殿方にお聞きしたいんですが、ヤマトの一戦士として堂々と戦場に立つ彼女が、抱きしめたら意外に細い。ベッドの中で裸になったらもっと華奢で壊れそうな…ってそのギャップめちゃくちゃエロくないですか?そそられませんか?(ここは古代本人に聞きたいところですが、間違いなく銃殺…^^;)

 ……すみません暴走しました。

 

 冒頭の岬版ヤマトは、SF作家の筆になる「目の肥えたアニメファン向け」の 一冊だと思います。出たのも完結編一作のみ。

 対して一般向けに広く出回っていたのが、若桜木 虔氏のコバルト文庫版だと思います。こちらはヤマト2を除く全作品を網羅しています。

宇宙戦艦ヤマト(若桜木 虔 コバルト文庫)

宇宙戦艦ヤマト若桜木 虔 コバルト文庫

 最近古本市で偶然手に入れたのですが、当時集英社から出ていた『小説ジュニア』1980年9月号に若桜木版『ヤマトよ永遠に』が読み切り掲載されていました。

 この雑誌はいわゆるティーンズ(昭和だなあ)向けで、こちらに詳しい内容が出ています。(ゆかにゃん先生のコメントあり♪)

 

『小説ジュニア』はどんな雑誌だったのか - Togetter

『小説ジュニア』は、小説誌『Cobalt』の前身のジュニア(中高生向け)小説誌。 現在のライトノベルのご先祖ともいえるこの雑誌はどんなものだったのか?

https://togetter.com/li/982532

 

 ちなみに、くだん書房様(http://www.kudan.jp/index.html)のサイトでは、『小説ジュニア』の書影と詳しい目次を見ることができます。青春小説に源流を発しつつ、80年代に入るとSFアニメとアイドルとヤンキーと愛と性の実録モノが加わっていく感じです。

 アニメファンのためのアニメ誌とはまた違うラインナップがまことに興味深い(笑)

 コバルト文庫といえばヤマト女子の萌えと妄想の宝庫だったのが、うなずけると言うものです。

 

 さて、 ノベライズの面白さとは、本編にはない独自の掘り下げだと思います。ことに若桜木版は古代&雪ファンには美味しい掘り下げが多い。

 まずユキ様のヤマト乗り組みに至るまでの経歴。

「大学の医学部進学を志していたが、地球の危機を見過ごしにできず、志願して司令部付属病院の看護婦になった。外見は優しいが、なかなか活発で理知的な娘だよ」

 義侠心に富む優等生のユキ様に対し、古代進は優秀な兄に劣等感を抱く屈折した青年として描かれています。

(兄さんの頃には、優秀な人材が大勢いた。今は人口の激減で、入学してくる奴もクズばかり……そんな中で優秀な成績で卒業したって――)

 進は宇宙訓練学校のことを持ち出されるたびに、嘲笑されているような気がするのだった。

 私、この古代&ユキの掘り下げが大好きで、自分で二次小説書くときもこの設定に乗っかって書いていました。

 それから重要なポイント。若桜木版は、主語が「古代」じゃなくて「進」なんですよ。これは萌えます。

 

さらば宇宙戦艦ヤマト(若桜木 虔 コバルト文庫)

さらば宇宙戦艦ヤマト若桜木 虔 コバルト文庫

「愛しているよ」

「私もよ、進さん」

 どちらからともなく手を伸ばし、まだ家具も何も入っていない二人きりの部屋で、長く熱いキスを交し合った。

「これからはいつも二人で」

「ええ……」

 強く融け合うように抱き合って、いつまでもいつまでも……。

  新たな危機への、漠然とした不安。それを振り払うような熱情。

 昔の同人誌でこのシーンを漫画化した方がいて、それはそれは萌えました。

 今あらためて読み返すと、若桜木版は女性読者を想定して書かれていたように思います。だから、古代&雪のシーンの補完が比較的多い。それはそれで、当時の自分にとって胸ときめくものではあったのですが、今読み返すと「さらば」以降の二人の関係に不満を感じます。

 オリジナルがそうなので仕方ないんですが、任務のことばかりの古代と、古代のことばかりの雪。PART1の義侠心あふれる雪は、消えていきます。

 それが時代の限界だったのかな、とも思うのです。