とうとう完結した宇宙戦艦ヤマト2202について。
書きたいことが山のようにあるのですが、取り急ぎ、思ったことをひとつずつ、書いていきたいと思います。
えー。いきなり最終話『地球よ、ヤマトは…』についての話で恐縮です(^^;)
”銃爪を引き続ける未来しかない”と高次元の彼岸に沈もうとする古代くんを引き戻そうとするユキ。
しかし、古代は彼女の手をとることをためらいます。
ためらい、背を向けようとしたその時、彼の手を掴んだ小さな手。
彼が仲間たちの待つ元の次元に帰ることを決意したのは、その小さな手によって、でした。
私はこの場面、ああ、古代進らしいな、と思いました。
25話で玲がキーマンに「自分のために生きられない人生なんて」と言いますが、ヤマトのクルーってそんなヤツらばっかりだと思うのですよ。
いつだって、誰かのために生きている。
他人が傷つくのを見るくらいなら、自分が傷ついたほうがいい。
キーマンも斉藤も土方艦長も。そして古代も。
だから斉藤は「自分のためにしか生きられねえヤツのほうが、よっぽど悲しいってもんでぇ。なあ。」って言ったんじゃないかな。
そんな古代に後を託し、ヤマトに帰さなければならないから。
そして斉藤には、その古代の辛さがわかるから。
さらに言えば、11話の土方艦長の言葉。「みんなで背負う、か。あいつめ…自分のことでないと…」他人の重荷は分かち合えても、自分の事は考えられない。そんな古代に対する師としての思いが感じられます。
玉座の間においてズォーダー大帝は、「多くの犠牲の上にここに来たお前が」という言葉で、そんな古代の弱みを執拗に攻撃してくるのです。
古代にとって、ユキとともに生きることは”自分のために、自分の幸福のために生きること”だと思います。
しかし彼には同時に、ユキを自分の人生に巻き込んで傷つけること・失うことへの恐怖が常に付きまといます。
イスカンダル戦役で、セレステラをかばって古代の目の前で銃弾を浴びたユキ。この記憶は古代にとって終生忘れ得ない悪夢であると思います。この悪夢故に、テレザートへの旅を決意した時古代はユキを地球に置いておこうとしたのだと思います。他の仲間には「みんな、力を貸してくれ」と言っているにもかかわらず、です。
そしてシュトラバーゼで自ら身を投げたユキの姿も、悪魔の選択から彼を救うためとはいえ、古代にとっては身を抉られるような悪夢、だったと思います。
ユキが過去の記憶を回復し、その代わりに自分との記憶を失った時「なんで……なんで」と崩折れた古代には、”なんで今なのか。これが地球を離れる前であれば、自分のことなんか忘れて彼女は安全に生きていけたのに”という思いがあったのだと、私は思います。
彼女とともに生きたい。だけど自分が戦士である限り、それは彼女を傷つけ苦しめ、失うことと隣り合わせ。これは旧作の時から変わらない古代進のジレンマ、なんですよね。ユキ自身が”たとえ修羅でも地獄でも古代とともにある”ことを願い、行動をもって愛を示す女性であるのもかかわらず。
(旧作において、古代がそのユキの思いを受け止めてやっと腹くくるのって、完結編のコスモゼロ偵察行だったと思うのです。Ⅲではその任務上生活班長としての彼女がどうしても必要だった。だから自分は艦長であろうとした。そんな危険な旅に連れ出す男に、婚約者としての愛情を求める資格はないからーーすみません。思いっきり萌え入ってます^^;好きなんですよヤマトⅢ)
更に古代は、自分が”血に汚れた”ことを自覚しています。
スターシアとの約束を守れず、しかも自分がミルに和平を切り出したことでユキまで傷つけてしまった。もう戻れない。どちらかが倒れるまでこの戦いは終わらない。覚悟を決めなくてはならない。
桂木透子=サーベラーに「綺麗事は言わない」と申し出た彼の胸中には、そんな思いがあったのではないでしょうか。
土方艦長が倒れた時、彼の掌はべっとりと血に塗れています。そんな汚れた手で、未来を掴む資格などあるのか。一瞬歪んだ表情にその思いを感じます。しかし彼はその思いを振り切るように「土方前艦長の命令を決行する!」と叫ぶのです。
彼女の手をとれば、彼女を同じ運命に巻き込んでしまう。
自分には、何も守れない。
そして、自分の手は汚れている。
そんな思いに囚われた彼には、やっぱり高次元の彼岸でユキの手を取ることができなかったのだと思います。
自分ひとりで、消えてしまった方がいい。そんな事を考えて。
ところがここに、彼が帰らなければ存在できない未来、彼がまだ、守り得る未来が存在します。
それがあの小さな手、です。
自分にまだ守り得るものがあるなら、自分はまだ生きていてもいいのではないか。
古代が、ユキの手ではなく、あの小さな手で帰ってきたことの意味は、ここにあるように私には思えます。
だから私は、あの場面は、本当に古代進らしいな、と思うのです。
旧作の頃から、ずっと。