YAMATO criticism

宇宙戦艦ヤマトについて、または宇宙戦艦ヤマトを通して考える。

沖田艦長をめぐる物語について(その2)

 大分間が空いてしまいましたが、超個人的ヤマト裏設定(旧作)の続きです。供養のためにUPしています。

 本編の裏事情の勝手な妄想です。よろしければお付き合いください。

宇宙戦艦ヤマト2』その後
 大きな犠牲を払い、死闘の末に彗星帝国・大帝ズオーダーを退けた宇宙戦艦ヤマト
 しかしそれは”勝利”とは程遠いものだった。

 地球に帰還した古代進は、雪の目の前で軍に拘束、収監された。
 彼を待っていたのは、国家反逆罪を問われての軍事法廷だった。結果的に地球は救われたとはいえ、連邦政府の決定を独断で翻した罪は重い。

 裏で政府高官たちを煽っていたのは、やはりゼルダ・ローゼンバーグだった。彼女はこれを願ってもない好機とし、政府高官と防衛軍内の反藤堂派を結びつけ、ヤマトクルーとその後楯である藤堂平九郎長官の更迭と古代進の処分を画策する。

 雪をはじめ生き残ったクルーは、いまだ戦いの傷が癒えない身ながら連絡を取り合い、古代進の釈放を訴える。

 しかし当の古代進自身が、それを拒否した。収監の身の彼は雪との面会にすら応じず、ただ裁かれることを望んでいた。

 大帝ズオーダーを退けたのは、テレザートのテレサの命を懸けた抵抗であり、ヤマトの戦いは”敗北”に等しい。自分は、沖田艦長のように地球を救えなかった。自分の呼びかけに応じてくれた多くのクルーを死なせたにもかかわらず――。

 古代進個人の心情はどうあれ、対ガトランティス戦で地球防衛軍はほぼ壊滅状態にあり、防衛力の再編は一刻を争う急務である。今は彼を処分するよりも、軍の再建のために尽力させるべきだ。

 そう主張したのは、政界で頭角を現しつつあった連邦議会上院議員ケビン・ワイズマンである。機を見るに敏な彼は、防衛軍内の反藤堂派は未だ藤堂長官に匹敵するリーダーを持たない烏合の衆であり、軍の主流派にはなり得ないとみていた。それよりも今は藤堂派に手を貸しておく方が、いずれ防衛軍を自身の支持基盤としコントロール下に置く布石になると考えていたのだ。そこを足掛かりとして連邦大統領の座を手に入れるために――。

 「私は貴女の敵ではない。いずれ機は熟しますよ。どうです?手を組みませんか?」彼は謎めいた微笑みを浮かべゼルダの前に現れた。(彼はゼルダをも利用することを画策する。彼にとってベストのシナリオは、古代進が英雄として名誉の戦死を遂げ、彼の献身を褒め称えつつ残された”ヤマトの戦士”森雪を己が妻とし、英雄の遺志を継ぐ者として大統領の座に就くことだった。ゼルダがヤマトクルーに決定的な影響を持つ沖田十三の死命を握っていることを、彼もまた知っていたのだ)

 かくして、古代進は外周艦隊所属の任を解かれ、特務艦ヤマト艦長代理として訓練航海の任に就くことになる。古代進の最終的な処分は、帰還後に持ち越されることとなった。

 俺の最後の仕事は、この航海で若者達を一人前に育て上げることだ。それが終わったら、俺はーー。

 雪にも明かせない密かな決意を胸に、古代進は再びヤマトに帰ってきた。