YAMATO criticism

宇宙戦艦ヤマトについて、または宇宙戦艦ヤマトを通して考える。

ノラン君の母ちゃんを勝手に妄想してみた

 今日見たら、配信22話まで増えてました。このまま最終回まで頼んますNHKさま^^

 さてこの話。太平洋戦争下の日系人家族の苦難の物語です。

 ドラマでは先代松本幸四郎が演じていた主人公・日系2世の天羽賢治は、新聞記者として活躍していたものの、日米双方から差別と尋問を受けた末語学兵として米軍へ。やがて東京裁判の通訳モニターを務めることとなりますが、苦悩の末自ら命を絶ちます。

 賢治の次弟忠は日本で徴兵、末弟勇は自らが良きアメリカ人であることを示すために志願兵となり、日系人部隊として知られるアメリカ陸軍第36師団442部隊で戦死します。(ドラマでは聴力を失いながらも生還)

 祖国とは何か、という問いに奈落の底まで突き落としてくれる物語です。

 ものすごく重い歴史の話とエンタメを一緒にするのは申し訳ないような気もするのですが……おそらく、この442部隊からとったんだろうなーと思ったのが、2199に出てくるザルツ義勇兵第442特務小隊。そう。あのノラン君の部隊です。

 2202以降、なんかいなかったことにされてるっぽいノラン君ですが、デスラー体制が崩壊した後のザルツや、彼の家族はどうなったんだろう?なぜスケルジ一家はガミラスで生きていこうとしたのだろう?と考えるうち、なんかノラン君の母ちゃんのイメージが勝手に浮かんだので書きなぐります。

 ノラン君と442部隊のみんな。どんな思いでガミラス国歌を歌ったんだろう。

 どうか彼らの魂が安らかでありますように。 

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 彼女の名はレオナ・バンツァー。ザルツ共和政府の一軍人。頬傷の女性。

 ガミラス植民地時代のザルツにて、夫とともに地下組織『自由ザルツ軍』を率いてガミラス に抵抗していた。

 デスラー体制下のガミラスでは「ザルツの雌豹」と呼ばれたおたずね者。娼婦でテロリスト、ならず者のあばずれ女と喧伝されていた。 

 ガミラス市民権を持つザルツ人の間では、そのプロパガンダを信じ彼女を忌み嫌う者が多かった。(娼婦であったことも、保守的なザルツ女性には嫌われる要因である。ヤーブの妻バルナも彼女のことはよくは思っていない)

 幼い頃娼家に売られ、兵士たち相手の娼婦として生きてきた。

 ある時客として出会った男の底抜けの愛情にほだされ脱走。男はガミラス支配下のザルツで自由と自治を求める地下組織『自由ザルツ軍』のメンバーだった。

 彼女は男と行動を共にし、やがて彼を夫とし一人息子を産む。夫は自由ザルツ軍のリーダーとなるが、ガミラス軍の総攻撃により志半ばで戦死。彼女も頬に傷を負う。

 残された彼女は夫の遺志を継ぎ組織を立て直すが、このままでは幼い息子を守りきれないと考え、息子を知人のオシェット爺さんに託した。息子には母の素性は教えず、ただ貧乏だから出稼ぎに出ていると教えていた。

 しかし成長した息子は、自分がザルツ義勇兵となり功績を上げてガミラスの一等市民権を得れば、オシェット爺さんや母親にいい暮らしをさせられると考え、黙って家を出てしまった。彼こそ後のザルツ義勇軍・B特殊戦群第442特務小隊所属ノラン・オシェットである。

 自由ザルツ軍はガミラス本国のデスラー体制崩壊とともに一斉蜂起し、親ガミラス政権を倒しザルツ共和政府を成立させる。

 独立後のザルツはガミラスとの断交を宣言し、ガミラス支配下にあった時代を暗黒時代として否定した。それまで英雄とされていたガミラス軍で戦ったザルツ人や、ガミラス人と結婚した女性は、売国奴・裏切り者として排斥の対象となった。

 ―――あの人は、そんなザルツを作るために死んだんじゃない。

 ―――あの人は、俺たちはガミラスの奴隷じゃなく友となるために独立するのだといつも言ってた。あんたたち忘れたの?

 レオナの言葉は、かつての支配者ガミラスに対する怨念に囚われた仲間たちにはもはや届かなかった。

 彼女は共和政府から身をひき、一軍人として辺境の星々で未だ本国に帰れずにいるザルツ人同胞の救援にあたっている。宇宙のどこかで息子に巡り合うことを願いながら――。

 ガミラス本星消滅の報は、ザルツにも届いていた。

 しかし共和政府は救援部隊の派遣を否決。天罰として快哉を叫ぶ者すら多かった。

 渋るかつての仲間たちを調査名目で説き伏せ、救援物資をかき集めて詰め込み、レオナがようやくかつてのガミラス星宙域に駆け付けた時。そこにはただ無数の残骸が漂うばかりだった。

 そこで彼女はテロンの艦「ヤマト」と出会う。

 艦長古代進から未知の艦隊の情報を得たレオナは、自分達の貧弱な装備ではかえって足手まといになると判断し、救援物資のみテロンの艦隊に託す決断をする。

 物資の積み込みのため「あすか」を訪れたレオナ。艦長森雪と公式な会見が終わったとたんいきなり地が出る。

「ねぇねぇあの髪の長い艦長あんたのご亭主でしょ」

「い、いえあの」

「長いことオンナやってりゃ分かるわよ。なかなかいいオトコじゃない。それにしてもこんなとこまでガミラス助けに来るなんて、あんたのご亭主も相当お人好しねえ。」

「……」

「ま、アタシの亭主もひどかったけどさ。まったく、お人好しの亭主持つと女は苦労させられっぱなしよねえ」


彼女にとって亡き夫とは。

「ガキの頃から男騙して稼いできた女の言うことを丸ごと信じる底抜けのお人好し」

「お人好しすぎて、ザルツの人間全部背負おうとして自分が死んじゃった」

 

 思わず笑い合う雪とレオナのもとに、血相を変えた藪が怒鳴り込む。

「ザルツが今更何の用だ!」

 デスラー体制崩壊後、ザルツ本国はガミラス と断交。ガミラスで暮らすザルツ人をも拒否した。ヤーブの妻となったバルナも故郷を訪れることすら許されなくなっていた。

(旧体制で彼女の父シュルツが「英雄」とされていた反動で、副総統ヒスの庇護を受けるヒルデ・シュルツには憎悪が集まった。彼女がヒスの再三の申し出にもかかわらず養女となることを拒んだのは、ザルツ人に憎まれる自分が養女になることがヒスの立場にさわると考えてのことだった)

「今さらノコノコやってきやがって!オレの家族はザルツ人なのにアンタ達に見殺しにされたんだ!」

 ヤーブの激情を、レオナはただ受け止めた。

「……ごめんね」

 

 救援物資の引き渡しが終わり、去り際にレオナはヤーブに言う。

「ねぇ。今はまだゴタゴタしてるけど、きっとあんたたちに"おかえりなさい"って言えるザルツにするよ。

だから…だから、あんたたちの故郷はガミラスだけじゃない。ザルツも故郷だからね。忘れないで…。」

 

そして雪に。

「もしあんた達がガミラスで私の息子に会ったら、母さんが待ってるって伝えて。

 ノランっていうの。…多分、ノラン・オシェットって名乗ってる」

「ーー待って‼︎」

 通信はそこで切れた。

「……待って……お願い……」

 泣き崩れる雪。

 

 レオナ達の救援物資の中には、ザルツの故郷の味。温かい煮込み料理の材料があった。

 ヤーブと平田が協力して再現したその味は、イスカンダルで救われた人々の心身を癒したという。