7月7日、古代進生誕祭に寄せて。
初めて会った時、あたしはまだ子どもだった。
あんたの側にいるあのひとがとっても幸せそうで、ほんとにあんたのこと好きなんだなって、子どものあたしにもよく分かった。
だからあたしも、あのひととあんたが大好きになったんだ。
あのひとがあんたを残して死んでしまって、そしてあんたも何もかも背負って旅立ってしまうなんて、そんなのあたしには許せなかった。そんなの認めないと思った。悔しかった。
あれが立派だとか、感動的だとかいう奴らは、だったら自分も死んでしまえと思った。
あんたとあのひとに生きて帰ってきて欲しかった。
あんたとあのひとに、笑っていて欲しかった。
あたしは少し大人になって、あんたが戦った相手にも、あんたとあのひとと同じような気持ちがあるってことが分かってきた。
そしてあんたが、そのことで苦しんでるってことも。
あたしはあんたの気持ちを解りたいと思った。
戦争というもの。あんたと同じように大切な人を亡くしたたくさんのひとたち。その時代を生き抜いた人たちの思い。人はなぜ人と戦うのか。それを避けることはできないのか。
あたしは図書館に入り浸って、手当たり次第に記録を読み漁った。
そして考えた。
人の憎しみについて。憎しみと暴力の生まれるところについて。
知りたいと思った。
それからあたしにも大切な人ができて、あんたを思うあのひとの気持ちが痛いほどわかる気がした。
誰かを好きになればなるほど、人の生命に限りがあることと、一緒にいられる時間が有限であることが身にしみてわかる。
きっとあのひとはずっと前からそのことを知っていたんだ。
もうすっかりあんたより年をとってしまったけど、未だにあたしは分からないことだらけでみっともなく足掻いている。
足掻きながらも、一緒に生きてくれる人がいることに感謝しているよ。
だからあんたもあのひとのそばを離れないで。
あのひとの手を離さないで。